ホウセンカ
ひとつの恋が終わった。
それだけの事。
それだけの事と言い聞かせる。
15歳差の恋人だった。
少し変わっていたのは
わたしのほうが15歳年上ということ
彼との生活はキラキラでピカピカ
すぐに一緒に暮らし始めて
仕事も休みも全部同じ生活
真っ直ぐな愛情表現
幸せ過ぎて楽し過ぎて
周りからも本当に仲が良いねって
15歳差の異色なカップル
映画とかドラマみたいってよく言われた
映画とかドラマみたいに素敵な日々だったよ
カメラロールには何百枚も2人の写真
就活や色々な理由で
一旦同棲を解消したけど
それでも楽しい日々だった
彼が新しい仕事に就いた後は
また一緒に住む部屋の物件なんか
一生懸命見てたね
「将来、自分で生計を立ててから
結婚して子供が欲しい。
それが何年後になるか分からない」
そこにわたしはきっといないと。
何度も話し合ってきた歳の差問題
その度に支えてくれたのは彼だったから
彼からその言葉を言われてしまったら
もうわたしは何も言えない
そしてお別れした。
そうだよな、
わたしが40歳になった時
彼はまだ25歳なんだもんな
最初はわたしが歳の差問題で
負けそうになって
その度に彼は
「おれは子供が欲しいんじゃなくて
ちーとの子供が欲しいの。
出来なかったら2人で暮らすの。
ちーが居たらそれが幸せなの」
と言ってくれた。
好きだけの時間が終わって
現実を見始めたんだ
他に気になる人が出来たのかも
本当のところは分からない
どんな理由であれ、終わってしまったんだ
それが正解なんだよな
静かに2人泣きながら話し合って終わった
あの日の部屋の換気扇の音が妙に残る
捨てゼリフで
1人じゃ何にも頑張れない
と泣いてしまった
格好悪いな、わたし。
恥ずかしくて惨めだ
最後くらいは良い女でいたかったのに
ひとりで生きていくことは出来る
与えられた幸せをもう貰えないだけ
一緒に行った旅行楽しかったな
たくさん色んな所行った
近所の公園で静かに線香花火も
ニトリから重たい棚を
声掛け合いながら運んだね
一緒に映画もたくさん見た
ハマってた漫画の続きはもう見れない
色んな約束を小指で結んでした
2人で行ってた飲み屋さんも
冬は仕事帰りに銭湯行ったね
そんでコンビニで缶ビール買ってさ
ラーメン屋さん巡りもたくさんした
ことごとくこれから
もっともっとたくさん思い出す
それを知ってるからヒリヒリする
彼の残像がそこら中にある
歩く街並みの景色にもこの部屋にも
彼がもう抱きしめてくれない事が辛い
朝起きて隣に居ないことも
LINEが届かないことも辛い
換気扇の下で一緒にタバコを吸うのも
一緒にゴハン作るのも
何か作ろうとする度に調味料買うから
冷蔵庫のなか調味料でいっぱいだよ
iPad開いたら物件探しのページ
笑い合うことも喧嘩することも
お揃いでいれたタトゥーも
誕生日にくれたペアリングも
ちー!って呼ばれて振り向くと
写真を撮ってくることも
その写真には彼を見つめる幸せそうな自分も
8月の彼の誕生日は隣に居たのに
10月のわたしの誕生日には隣にいない
彼が去った後、
洗面台に並ぶ歯ブラシを見てまた泣いた
涙の理由が終わらない。
友達はわたしの友達だから
今更それ言うの酷過ぎない?
って怒る友達もいたけど
ちひろすごい幸せそうだったもんね!
って。そうなんだよなぁって。
ご飯も食べれないし眠れない
花の名みたいな薬を飲んで
強制的に眠りにつく
お薬の力は偉大だ。
思考を止めて眠らせてくれる
ドラマはバットエンド。
彼にとってはハッピーエンドなのかな
好きだけで走り抜けたときは
どんな壁があっても
乗り越えれるって信じてたんだ
叩き起こされた現実のなかを
生きていかないといけないらしい
ちゃんと悲しいと辛いと向き合って
向き合わないと先へ進めないもんね
がんばり方を探しながら
彼を幸せに出来てたかな
わたしは幸せだったぞ。
わたしでは君の将来を
幸せにする事ができなくてごめん
36歳、全力で恋をしたお話し。